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徳沢愛子 おじいさんのもの

Updated: Jul 23, 2023

徳沢愛子 

おじいさんのもの


おじいさんのものを恐る恐るつまみ出します

初めてというのは脂汗のにじむものです

どうでもよいうわべだけのことは

何も考えない と

自分に言い聞かせて つまみます

なんというやさしげな重量

何というほのかな暖かさ

何という意味深いこの在りよう


いまは 麦茶の道

味噌汁の道

命を養う通り道

透明なガラスの尿瓶にそっと横たえると

仮死した雀のかたち

その先端から ゆらゆら

ガラスにうす黄色の花模様

それは雀が見る短い夢に似ています

微笑みたい 泣きたい花の夢です

いくたびか見てきた

夢の残滓

病窓から射しこむ残照に映える

琥珀色のよどみは

かりそめの死のしたで

沈黙の歌をうたっています


蒼空高く電線の上

勇ましく囀ったあの眩しい朝など

すっかり忘れて

八十八の歳月の終わり

その夕暮れの坂道を

雀は今 深く倒れています

掴もうとして掴みえなかった真理を

おぼろに内包して倒れています

永遠の栄光を引いて

ガラス越しにほっと倒れています

優しく 優しく倒れています


This piece was published in 2023 as part of the Around the World in Mormon Literature contest by the Mormon Lit Lab. Sign up for our newsletter for future updates.

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